Lil Baby『Superman (feat. Young Thug)』は、アトランタの二大スターが織りなすメロウでありながらもトラップの重厚なビートが効いたUSヒップホップの新曲である。アグレッシブさと哀愁を同居させたこの楽曲は、Lil Babyが築き上げてきたストリート・クロニクルの系譜に新たな叙情性を加えた一曲といえる。
ビートは808ベースを軸に低音域が深く沈み込み、キックとスネアが乾いた質感で刻まれるなかで、シンセのメロディが浮遊するように配置されている。リズム隊のハードな骨格を保ちながらも、フックではメロウな音像が前面に出てくることで、楽曲全体に緩急が生まれている。Lil Babyのボーカルは抑制の効いたトーンでありながらも、フロウには独特のシンコペーションがあり、リリックをリズミカルに滑らせていく手腕が光る。一方Young Thugは持ち前の癖のあるボーカルで浮遊感を加え、二人のコントラストが曲に立体感をもたらしている。ライミングの配置も計算されており、韻を踏むタイミングをずらすことでグルーヴに変化を与え、聴き手を飽きさせない構成となっている。
リリックでは成功の裏側にある孤独や葛藤、信頼関係の脆さといったテーマが語られ、タイトルの「Superman」が皮肉を含んだメタファーとして機能していると捉えられる。完璧に見えるスーパーヒーローの裏で抱える弱さや重圧を、ラッパーとしての自身に重ねているようにも感じられ、HIPHOPCs編集部としてはLil Babyの内省的な一面を捉えた重要なトラックだと評価したい。
深夜の都市高速を流すドライブや、ヘッドフォンで細部まで聴き込みたい夜のリスニングに最適であり、クラブでのバンガーとは一線を画す、じっくりと浸れる質感を持つ楽曲である。USヒップホップの最前線を走る二人のラッパーが提示する、洗練されたトラップサウンドの到達点として聴くべき一曲だ。